「開発に1か月なんてかけられない」――日産自動車はなぜ「AI」「クラウド」へ動くのか? 変わるクルマ開発の競争軸とは
クルマの価値がソフトへ移行する中、開発現場でAIとクラウドを駆使した速度競争が加速している。日産自動車は2026年度に向け、従来1か月以上を要した開発プロセスを数時間へ短縮するAI体制を整備、テスト時間を75%削減する。外部インフラを活用しつつ自社の強みを囲い込む戦略が、次世代の競争を形作る。
各社の戦略が描く次世代の競争軸
大手自動車メーカーは、車両開発の内製化を進めている。米フォードの工場ではSymbio Roboticsの技術を導入し、組み立てラインのロボットが機械学習によって効率のよい動きを学習することで、作業工程を15%高速化した。トヨタ自動車や韓国の現代自動車も、AIを搭載したヒト型ロボットの製造現場への導入実証を進めており、人為的なミスの抑制や欠陥検知によって生産工程のコスト削減を目指している。
米CBインサイツの調査によると、AI対応では米テスラや中国のシャオミが自社開発のAI半導体などで先行する一方、トヨタ自動車はAI関連特許の保有件数で最多となっており、多様な企業との提携を通じて開発基盤の整備を進めている。ハードウェアまで含めた垂直的な内製化を進める企業がある一方で、日産のように外部のクラウド事業者と連携し、ソフトウェア開発へのAI活用を進める取り組みもある。
シミュレーション条件の選定や成果予測、3Dモデルの作成など、繰り返し行う作業の効率を高めることで、データセンターを増設することなく開発力の強化を目指している。自動車メーカーは個々のAIツールを連携させ、工場から車両、物流までを一体で扱う分散型AIネットワークの活用へと移りつつある。
すべてを自社で担う企業から、外部の開発基盤を積極的に活用する企業まで、内製化の範囲は事業戦略によって大きく異なっている。AI開発環境やマルチクラウドの活用が業界全体へ広がる中で問われるのは、導入した技術を生かして新たなモビリティ体験を生み出し、それを事業価値へ結び付ける力である。IT企業やAIスタートアップとの連携で専門知識を補いながら、どの領域を自社の強みとして育てるかという経営判断が、今後の自動車産業の競争力を左右する。