「眠れる公用車」は地域交通になれるのか? 100台実証で浮かび上がった地方モビリティ転換の条件とは
モータリゼーションの限界を迎えた地方の交通空白に対し、眠れる公用車や社用車を非営利でわかち合う共同使用の挑戦が始まった。長野での車両100台を投じた実験や宇和島での独自通貨決済など、デジタルを駆使した試みが始動。目標の月1111回に対し実績20回という厳しい現実を越え、新インフラを拓く。
共同使用モビリティの最前線

高度経済成長期以降の過度なモータリゼーションは、国民の利便性を飛躍的に高めた反面、公共交通を衰退させ車がないと生きられない地方構造を作り出した。その結果、免許を返納した高齢者などが買い物難民や医療難民と化す中、地方部において人口減少や運転手不足にともなう路線バス等の縮小・撤退が相次ぎ、交通空白の拡大が深刻化している。
採算性の確保が難しいエリアでは、一般的なレンタカーやカーシェアリングといった営利事業の展開も困難である。さらに、地方生活に不可欠な自家用車であっても、車両代や保険料、車検代といった重い所有コストが、若年層や地方移住者への大きな負荷となっている。こうした移動の確保という構造的課題に対し、地域に眠る未活用資源を生かした共同使用というアプローチが浮上してきた。
これは従来のレンタカー等の営利事業とは異なり、非営利の相互扶助を前提とする。1台の車両を複数人で共有し、維持費を実費の範囲内で按分することで、提供側は保有コストを削減し、利用者は低負担で車を利用できる。
この共同使用の概念は今、全国的な広がりを見せるとともに、共有される対象や決済手法に進化をもたらしている。短距離移動を補完する自転車や電動三輪車といったマルチモビリティへの展開が進み、さらにはその決済にブロックチェーン上の
「独自通貨」
を導入するシステムまで整備されつつある。地域限定の通貨を用いることで、経済の外部流出を防ぎ、圏内だけで価値を循環させる仕組みだ。
民間企業の車両だけでなく市区町村の公用車を活用しようという行政アセットの有効活用に向けた動きも加速しており、本稿では、産業の境界を越えて広域化するモビリティサービスの現状を観察しながら、移動が地域社会を支える共通のインフラへと進化していく展望を追う。