なぜタイヤの「小石」を放置してはいけないのか? 静粛化するクルマ社会で“カチカチ音”が警告へ変わったワケ
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進化した車内と小石の矛盾

車の性能において、音の静かさは進化の歩みそのものといっていい。古くは1982(昭和57)年、トヨタ自動車工業(当時)の国枝忠昭氏による論文「車内騒音について」でも、この要素は重要な性能に位置づけられていた。それから年月を経て、1995(平成7)年に自動車技術会会員の星野博之氏、小沢義彦氏が発表した報告(豊田中央研究所R&Dレビュー)でも、「近年、自動車車室内の静寂性はかなり向上してきている」と語られている。技術は長い時間をかけて、着実に磨かれてきたわけだ。
そして今、エンジン音を持たない電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)が街を行き交うようになり、車内の平穏さはかつてない水準に達した。そもそも車内の雑音は、エンジン音、低周波のこもり音、風切り音、そして路面から伝わるロードノイズの四つにわけられる。動力が変わったことで、タイヤの開発競争の力学も様変わりした。メーカーには従来の減りにくさや燃費の良さだけでなく、路面からの音を遮り込むような独自の溝パターンを編み出すことが求められている。
ところが、ここに盲点がある。車内を心地よく保とうとタイヤの溝を細かく複雑にするほど、路面の小石を挟み込みやすくなるという矛盾が生まれるのだ。他の雑音が消え去ったからこそ、皮肉にもドライバーの耳は冴え渡る。以前ならかき消されていたはずの、車外からのわずかな音が気になって仕方がないという人が増えているのだ。とりわけ冬から春にかけてスタッドレスタイヤを履く時期や、砂利の浮いた路面を走る季節には、車輪の回転に合わせて「カチカチ」と一定の間隔で音が響く。車の異常を疑わせるこの不快な音の正体は、タイヤの溝に挟まった小石にほかならない。
ありふれた出来事だと見過ごして走り続けるのは、決して賢明ではない。その音が不快だという話にとどまらず、最悪の場合は大きな事故や高額な賠償沙汰など、移動の安全の根幹を脅かす事態に結びつくからだ。その影響は、自分だけでなく周囲の交通社会全体へとしわ寄せとなって広がっていくことになる。