なぜ広島電鉄は「40億円」の投資を拒んだのか? ついに全国交通系ICに対応、地方路線バス会社の希望となりつつあるワケ
更新費40億円超の壁に直面する地方交通に、革命が起きている。広島電鉄が主導する日本初のクラウド型決済「モビリーデイズ」は、固定費を劇的に削減し、2026年7月には全国交通系ICにも正式対応。国の補助金方針をも揺るがすこの新技術は、地方路線バスの経営効率化とMaaSの未来を拓く起爆剤となるか。
独自割引の実験と全国への展開

MOBIRY DAYSが全国へ広がるためには、交通系ICカードへの対応以外の価値を示す必要がある。
例えば、2025年2月1日から広島県廿日市市の自主運行バス(さくらバス・おおのハートバス)で、広島電鉄と連携し、MOBIRY DAYSとマイナンバーカードを結び付けた高齢者運賃割引の実証実験が4月まで行われた。対象は70歳以上の市民で、通常150円の運賃を100円に割り引く取り組みである。
マイナンバーカードによって割引対象者を自動で判別する仕組みは、自治体の福祉施策と移動サービスを効率よく結び付けることにつながる。実際の利用実績に基づいて正確に予算を執行できるため、自治体は支出を抑えやすくなり、バス事業者は請求業務の負担を減らせる。この利点は、各自治体が導入費用を支援する動機にもなり得る。
県外への展開もすでに始まっている。2025年10月4日には北海道の北見バスの路線バス全線で運用が始まり、沖縄県豊見城市で2025年11月28日から2026年2月15日まで行われた自動運転電気自動車(EV)バスの実証実験でも採用された。
インターネット環境と汎用的な読み取り機があれば運用できるクラウド型の仕組みは、地域による制約を受けにくい。導入する事業者が増えるほど開発費や更新費を分け合えるため、継続しやすくなる。全国への展開は、地方の路線バス事業者の経営効率を高める有力な手段となっている。