なぜ広島電鉄は「40億円」の投資を拒んだのか? ついに全国交通系ICに対応、地方路線バス会社の希望となりつつあるワケ

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更新費40億円超の壁に直面する地方交通に、革命が起きている。広島電鉄が主導する日本初のクラウド型決済「モビリーデイズ」は、固定費を劇的に削減し、2026年7月には全国交通系ICにも正式対応。国の補助金方針をも揺るがすこの新技術は、地方路線バスの経営効率化とMaaSの未来を拓く起爆剤となるか。

更新費高騰とPASPYの終了

広島電鉄の路線バス(画像:写真AC)
広島電鉄の路線バス(画像:写真AC)

 交通系ICカードシステム「PASPY(パスピー)」の後継として導入されたのがMOBIRY DAYSである。広島県内では1993(平成5)年に磁気式の「バスカード」が導入され、その後2008年にPASPYへ移行した。全国相互利用カードの片利用にも対応してきたが、高額な機器更新費用が重荷となり、2025年に運用を終えた。

 朝日新聞の2022年3月9日付報道によると、2008年にサービスを始めたPASPYは、広島電鉄やいわくにバスなど県内・近郊の32社で導入され、累計発行枚数は190万枚に達した。しかし、運賃計算を担う車載機器やサーバーは7~8年ごとの更新が必要で、その費用は40億円を超える。広島電鉄の負担だけでも約半分に及び、新型コロナ禍で経営環境が厳しくなるなか、各社が維持を続けることは難しくなった。

 これを受けて広島電鉄は、NECなどと共同で新たな乗車システムの開発に着手した。スマートフォンのQRコードや新しいICカードを利用し、無線通信で接続されたクラウド側で運賃計算を行う仕組みである。当時の椋田昌夫社長は、費用負担の軽減に加え、将来は顔認証など多様な認証手段にも対応できる柔軟性を導入理由として挙げていた。

 県内・近郊32社、累計190万枚という利用規模に対し、7~8年ごとに40億円超の更新費用を要する仕組みは大きな固定費負担となっていた。運営協議会全体では約50億円、広島電鉄単独でも約20億円の更新費用が見込まれていた。椋田社長は2021年6月の株主総会でこうした負担への懸念を示し、PASPYから撤退してQRコード決済へ移る方針を表明した。地域の中核事業者である広島電鉄の離脱は、地域独自の共同システムが維持しにくくなっていた現実を映し出していた。その後、広島電鉄は2022年3月にNECやレシップと新システムの開発を始めた。

 一方、広島高速交通(アストラムライン)が新システムに参加しなかった背景には、都市鉄道ならではの事情があった。JR山陽本線や可部線など広域の鉄道網と接続しており、全国交通系ICカードとの相互利用を維持する必要性が高かったためである。

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