修理待ち「1年以上」が約2割――旧車オーナーを直撃する「部品難」「整備士ロス」の現実、需給不均衡を解消できるのか
産業のデジタル化と資産維持の行方

いつ終わるとも知れない待ち時間や、底を突きかけた部品供給。こうした課題に対し、業界は情報の風通しをよくし、持続的な仕組みを作ることで応えようとしている。
まずはデジタル技術の活用だ。入庫の状況や部品在庫の動きをデータとして表に出し、修理の工程を共有する。そうすることで、先行きが見えない不安を少しずつ取り除いている。また、古い車ならではの技術を「特殊技能」として位置づけ直し、得意分野に特化した分業を徹底することで、限られた働き手の力を引き出す試みも進む。
さらに、壊れるたびに直すやり方から、長期的な維持管理をまるごと引き受ける契約形態への移り変わりも見えてきた。あらかじめ必要なリソースを囲い込んでおく手法は、供給能力の限界という壁を突破するひとつの道筋となっている。
ただし、資産としての維持を確かなものにするためには、もうひとつの壁を乗り越えなければならない。自動車保険の評価制度だ。現状、多くの損害保険会社は車の価値を独自の時価で判断しており、市場価格が数百万、数千万に達する車両であっても、事故の際には価値がないとみなされ、修理費用が十分に補償されないケースが少なくない。
クラシックカーの維持管理は、部品の供給網、技の継承、税制、そして資産評価という幾重もの層が重なり合った複雑な問題だ。しかし市場は立ち止まるのではなく、こうした制約を引き受けたうえで、新しい形へと歩みを進めている。全体の72.6%が整備環境を案じ、16.9%が1年を超える入庫待ちに直面するなか、いまや焦点は直せるかどうかではなく、
「どの技術や供給の輪に加わるか」
へと移った。厳しい現実を認めつつ、専門の拠点を介して知恵を出し合い、協力の形を築くことで、愛車を守れる可能性はむしろ広がりつつある。
この変化は、特定の愛好家の世界に留まるものではない。これからの自動車社会が資産をどう守り続けるべきか、その行く末を占う動きとして広がりを続けていくはずだ。