世界で現役バリバリ「客車列車」 でも、日本で瀕死状態なワケ
世界の客車列車は現役だが、日本では消えつつある。そこには日本の鉄道特有の事情があった。一体何か。
デメリットが目立つ客車列車
しかし、客車列車はデメリットばかりが目立つようになっていった。運転士も世代交代し、電車や気動車の免許を持つ人も増えていった。また国鉄の分割・民営化で、多くの職員が退職していった。
客車列車で、手間がかかることといえば「機回し」である。客車列車は、先頭に機関車があり、客車があとに続くことになっている。終点に着き、またもと来た線路を戻るとなると、機関車の位置を変えなければならない。そのため、別の線路を使って、機関車を反対側に送り込むのだ。このための線路を機回し線という。
機回しのために余計に線路を敷き、電気機関車なら架線を張らなければならない。高頻度の運用でホームに鉄道車両を止めている時間を長くするわけにはいかなくなると、電車のほうが扱いは便利だ、ということになる。
また機関車は、ひとつの車両が重く、線路に対しての負荷のバランスが悪い。東北方面で使用されていたED75交流電気機関車は、1両あたり67.2t。それが1両あたり27.3tのオハ50をけん引する。電車列車なら電動車と付随車で車重は違っても、そこまで大きな差はない。
現実的な運用を考えても、客車列車はスピードが出せず、電車や気動車のほうが高速度で運転できるということもある。同じ路線なら、同じような車両で統一したほうが、ダイヤの効率性は高くなる。客車列車があるせいで、列車の本数が増やせないという状況になっていたのだ。
また国鉄の分割・民営化にともない、客車列車の運転士と貨物列車の運転士が別会社となり、両方を運転できなくなるという状況も発生した。
もともと50系客車は余剰の機関車を生かしたり、運転士を効率的に利用したりすることが目的だったはずが、運行体系や時代状況の変化で急速に邪魔なものになった。