悲惨な「親子自転車の事故」防げるか? 転倒・衝突を緊急回避へ、日産の革新技術とは
日産自動車がこのたび発表した、クルマの緊急回避性能を大幅に向上させる運転支援技術「グラウンド・トゥルース・パーセプション(Ground truth perception)技術」。2030年までに市販車へ順次搭載していくという新技術についてリポートする。
回避不可能? 二つの事故モデル

一つ目は60km/hで走行中に左側から突然車両が車線上に飛び出し、それをLiDARが検知して避けるために右車線に自動的に移動。直後に右車線前方の右側から子ども(人形)が飛び出してくるという想定のものだ。
二つ目は、反対側の車線からタイヤが転がってきて、それを一旦は避けるものの、その後すぐにコントロールを失った車両が中央分離帯を飛び越えて自車に向かってくるというもの。
仮にこのようなシーンに遭遇した場合、一般ドライバーなら初動は対応できても連続する事象を認知して対応することは難しいだろう。これは従来の運転支援システムが実現していた危険回避能力でも同様のことが言える。
しかし今回のシステムを用いたデモでは、こうした複雑な事象に対しても見事に対処できていた。このような危険回避を行うにはセンシングだけにとどまらず、車体の制御の最適化も重要だったはずだ。
日産自動車のAD/ADAS & 先行技術開発部部長である飯島徹也氏は、
「事故のシーンを一つずつ見ていくと、今できる運転支援技術の限界を超えたところで発生している。この問題を解決するためには、運転支援システムが緊急回避領域でより強力な支援に踏み込む必要がある。その考え方に基づき、この領域の開発を加速しようと考えた」
と話す。
つまり、実際の事故でこうした複雑な要素が絡むシーンは少なからず発生しており、システムが対応できるなら事故ゼロ実現へ確実に近づいていく。今回のデモはこの考え方を基本に、新たな高分解能センサーとAI処理の組み合わせによって、高度な回避能力を発揮させることに成功したというわけだ。