「EV = 静かすぎて危険」は本当か?――約4000億kmの英国走行データが示す、事故率「ガソリン車とほぼ同水準」という結果
先行研究が示してきた見方

これまでの調査では、電気自動車(EV)は内燃機関(ICE)車に比べ、事故率がわずかに高い傾向があると指摘されてきた。差は大きくないものの、複数の研究で同様の結果が確認されている。
そのひとつが、ロンドン衛生熱帯医学大学院の研究チームによる分析だ。2024年7月に学術誌「Epidemiology & Community Health」で公表された論文によれば、歩行者がEVやハイブリッド車(HV)によって負傷する確率は、
「ICE車の約2倍」
に上る。都市部や町に限定すると、その差はさらに広がり、約3倍になるという。
研究チームは背景要因にも触れている。都市部では周囲の騒音レベルが高く、EVが発する音が歩行者に届きにくい。論文では、この点が理論的な説明と一致するとされており、EVの静かさそのものが歩行者にとって見えにくいリスクになっている可能性が示唆されている。
こうした問題意識は、EVが普及し始めた早い段階から共有されてきた。走行音の小ささが安全面で懸念されたことを受け、歩行者や自転車利用者に車両の接近を音で知らせる「車両接近通報システム(AVAS)」の搭載が、日本や欧州では2019年から義務化されている。擬似的なモーター音を発生させ、EVの存在を周囲に認識させることで、事故を防ぐ狙いがある。
事故率が高く見える理由は、静粛性だけに限られない。EVは都市部で使われるケースが多く、そもそも歩行者の数が多い環境にさらされやすい。人と車が交錯する場面が増えれば、事故の起きやすさも自然と高まる。
加えて、EVの購入者には比較的若い世代が多いとされ、運転経験が十分に積み重なっていない可能性も考えられる。車両の特性面では、EVは同クラスのICE車より重量が大きい場合が多く、接触や衝突時の衝撃が強くなりやすい点も見逃せない。こうした複数の要因が重なり合い、統計上の事故率として表れているとみられる。