私鉄vsJR西日本 4月デビュー「あをによし」は因縁の関西鉄道戦争を制することができるか?

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近鉄の「19200系あをによし」が2022年4月29日にデビューした。乗客の視点にたった車両づくりが特徴的だ。

「近鉄vsJR西日本」という構図

JR西日本のみやこ路快速(画像:岸田法眼)
JR西日本のみやこ路快速(画像:岸田法眼)

 ただ、関西の鉄道は「JR西日本vs私鉄」という競合区間や路線が多い。近鉄も同様で、大阪難波~近鉄奈良間はJR西日本大阪環状線および関西本線、近鉄奈良~京都間はJR西日本関西本線および奈良線と競合する。

 近鉄側もJR西日本を意識しており、「同じ区間を走っている電車であれば、私たち(近鉄)を御利用いただきたい思いがあります」(福田課長)と危機感を持つ。あをによしは奈良観光のシンボル的な存在と位置づけることで、近鉄をアピールする狙いがあるのだ。

 東京~奈良・近鉄奈良間の運賃を調べたところ、JRグループのみ利用だと8910円、JRグループ+近鉄だと8880円で、わずかながら後者が安い。京都~奈良・近鉄奈良間にしぼると、JR西日本は770円、近鉄は640円で、やはり後者が安い。

 特に20世紀の京都~奈良・近鉄奈良間は近鉄の独壇場で、運賃が安い、全区間複線、特急や急行も運転されており、利便性や速達性も申し分なし。これに対し、JR西日本は木津~奈良間を除きすべて単線で、各駅停車のみ運転されていた。1991(平成3)年3月16日のダイヤ改正で快速を新設するも、日中の毎時1本運転にとどまっていた。

 その後、JR西日本奈良線で沿線のベッドタウン化、関西文化学術研究都市などの開発が進み、一部区間の複線化が計画される。

 複線化工事は京都~JR藤森間、宇治~新田間から始まり、21世紀元年となる2001年3月3日のダイヤ改正で実施。併せて日中の快速は、みやこ路快速に衣替えのうえ、毎時1本から2本に増発。当時、JR西日本はスピードアップと快適性の向上を重視しており、車掌は車内放送で「速くて便利なJR(西日本)をお選びください」とPRした。

 複線化工事はさらに進み、2020年12月6日に山城多賀~玉水間、2022年5月22日にJR藤森~宇治間、新田~城陽間が相次いで複線化。2023年春のダイヤ改正で、複線化を生かしたスピードアップも考えられる。特にみやこ路快速は単線駅で対向列車の行き違いが解消されると、利便性が高まりそうだ。

 2022年5月時点、近鉄京都~近鉄奈良間の特急は約35分、急行は約45分。JR西日本京都~奈良間のみやこ路快速は約45分で、近鉄急行とほぼ同じ。参考までにあをによし取材前、京都15時03分発のみやこ路快速奈良行きに乗ったところ、京都~宇治間の乗車率が高く、奈良へ向かう人は少なかった。

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