欧州の誤算 「クリーンな理想」が自国産業の首を絞めるまで【短期連載】「2035年エンジン車禁止」という幻影(1)
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補助金依存のBEV限界

「Fit for 55」はエネルギー効率化や代替燃料、再生可能エネルギーなど幅広い分野を対象としている。車両に関しては、2023年2月に欧州議会で採択された乗用車・バンのCO2排出基準の新規則が該当する。
この規則の狙いは2035年までに新車をゼロエミッション化することだ。ゼロエミッション車であれば、エンジン車でも電動車でも認められる。しかし現実には、2023年時点で幅広く普及できるのはバッテリー式電気自動車(BEV)のみであり、実質的に「2035年エンジン車禁止」となっていた。補助金の追い風もあり、EUではBEVの販売台数が伸びていく。ここで、EU全体の動力別の販売台数の推移をみてみよう。
・2022年:112万3444台
・2023年:153万8106台
・2024年:144万7934台
BEVの販売は増え続けていると思われがちだが、実際にはそうではない。2022年から2023年にかけてはEU全体で+37.0%と大きく伸びたが、2024年には成長が鈍化した。特に減速が目立ったのはドイツである。ドイツにおけるBEVの販売台数を時系列で確認する必要がある(欧州自動車工業会のデータより)。
・2022年:40万7559台
・2023年:52万4219台
・2024年:38万609台
2024年のBEV販売は対前年で-27.4%と大幅に落ち込んだ。この要因は、2023年末で予定されていた補助金が打ち切られたことにある。スウェーデンも同様で、補助金を2022年末で終了した後、2023年はプラス成長を維持したが、2024年は-15.9%に落ち込んだ。
BEVはハイブリッド車やガソリン車と比べて価格が高く、広く普及させるには補助金が不可欠である。ドイツは2025年に販売が持ち直す見通しだが、2026年には新たな補助金が予定されている。BEVの普及は、補助金に依存している構造だといえる。