飛行時間の増加で疲弊する乗員・乗客 「ロシア上空回避」はいったいいつまで続くのか

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ロシアによるウクライナへの武力侵攻は、旅客および貨物の発着便に多大な影響を及ぼしている。現在、多くの航空会社がロシア上空を迂回する飛行ルートに変更。飛行時間が長くなると、搭載できる貨物の量が減る。

アンカレッジ経由は再実現せず

JALロンドン便でも使用されているボーイング777-300ER(画像:シカマアキ)
JALロンドン便でも使用されているボーイング777-300ER(画像:シカマアキ)

 ロシア上空の迂回ルートを余儀なくされる事態は、過去の冷戦時代にさかのぼる。

 当時、日本~ヨーロッパ間の路線はアメリカ・アラスカ州のアンカレッジ空港を中継するのが一般的だった。そのため今回も「アンカレッジ経由が復活するのでは」との臆測が飛んだ。

 しかし現在のところ、アンカレッジを経由する路線はゼロ。現在の進化した航空機は、日本~ヨーロッパ間を直行で飛べる航続距離の性能を備えている。途中で給油や中継をした場合、スタッフを配置したり給油設備を整えたりする必要もある。しかも、アンカレッジで乗り継ぎする旅客はそう多くはない。中継せずに一気に飛ぶ方が効率的なのだ。実際、シンガポール航空のシンガポール~ニューヨーク線(18時間30分、約1万6000km)のノンストップ便も運航されている。

 今後の見通しは、ウクライナ情勢次第だ。ただ、その情勢はいまだ収束する気配はない。ロシア上空を迂回する現状は少なくとも数年、さらに数十年と続く可能性もある。

 ビジネスや一時帰国といった需要が高い路線を中心にいくらかの発着便は運航されるものの、コロナ前の水準に戻ることは当面ないだろう。レジャーの需要は世界情勢に左右され、運賃が高止まり状態では旅行もしづらい。飛行時間が長くなると、体力的にも厳しい。

 飛行ルートは、現在の南回りと北回りが当面は併用されるだろう。ANAは4月末に羽田発ウィーン経由フランクフルト行きの南回りを今後、北回りで羽田発フランクフルト行きの直行便とすることを発表した。飛行時間は偏西風の影響を受けて変わる。往路をJALと同様に北回りで直行すると、3時間ほど短縮されるという。この傾向は他社、他路線も続くことも考えられる。

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