飛行時間の増加で疲弊する乗員・乗客 「ロシア上空回避」はいったいいつまで続くのか

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ロシアによるウクライナへの武力侵攻は、旅客および貨物の発着便に多大な影響を及ぼしている。現在、多くの航空会社がロシア上空を迂回する飛行ルートに変更。飛行時間が長くなると、搭載できる貨物の量が減る。

大半の航空会社は「南回り」

JL41便、NH1923便、羽田発ウィーン行きの「南回り」ルート(画像:FlightAwareより抜粋)
JL41便、NH1923便、羽田発ウィーン行きの「南回り」ルート(画像:FlightAwareより抜粋)

 ロシア上空の迂回ルートとして、ロシアの南を飛行する南回りルートを選択する航空会社が多い。ただ中には、北極圏を通過する北回りルートをあえて選ぶ航空会社もある。

 日本航空(JAL)は、東京(羽田)~ロンドン線、ヘルシンキ線、パリ線の3路線で、日本発の往路は北回り、ヨーロッパ発の復路は南回りといった具合に、行き帰りで違うルートで運航する。JALは当初、往復ともに過去に運航実績のある「ポーラールート」と呼ばれる北回りで運航していたが、2か月あまりでその方針を変更した。

 JALがロンドン線、ヘルシンキ線をまず運航再開した背景には、JALと提携関係にあるブリティッシュエアウェイズやフィンエアーの存在が挙げられる。JALにとっては、他のヨーロッパ各都市への乗り継ぎがスムーズにしやすいこと、機体整備などで協力してもらいやすいなどのメリットがあったのだ。

 一方、全日本空輸(ANA)は、ロシアの侵攻当初から往路、復路とも南回りでの運航にした。外資系航空会社では、エールフランスやKLMオランダ航空(KLM)、ルフトハンザドイツ航空も南回りだ。ただ、フィンエアーの成田~ヘルシンキ線、スイスインターナショナルエアラインズの成田~チューリッヒ線などは、JALと同じく日本発が北回り、ヨーロッパ発が南回りと往路と復路でルートを分けている。

 どちらのルートでも、飛行時間が増えることには変わりはない。JALの羽田~ロンドン線の場合、以前の所要時間は羽田発ロンドン行きが12時間40分、ロンドン発羽田行きが11時間55分だった。現在では、それぞれ15時間40分、16時間30分かかる。復路を南回りにすると、飛行時間を1時間半ほど短縮できるというが、それでも通常より3~4時間ほど多く時間がかかる状況だ。

 飛行時間が増えると、搭載する燃料の量が増える。それに伴い、搭載できる貨物の量が減る。コロナ禍では貨物需要は非常に高い。また、乗員の連続勤務時間が労働に関する法律に抵触する国もある。

 そのため、ANAは羽田・成田~フランクフルト線の往路をオーストリアのウィーン経由、JALの成田~パリ線がアメリカ・シアトル経由として、一時期設定された。KLMはコロナ禍より便数を減らし、成田と大阪発着で往路・復路ともに韓国・ソウル(仁川)経由で、運航を継続中だ。

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