日本車を襲う「三重苦」の衝撃――トランプ政権「USMCA離脱示唆」で米国生産どうなる? 国内空洞化の行方とは【みずほリポート解説】

キーワード :
2025年世界新車販売は前年比1.3%増の8910万台と堅調も、国内は454万台で縮小傾向。USMCA見直しや米国生産シフトが日本メーカーに巨大な戦略リスクを突きつける。

メキシコか米国か―コスト試算が示す厳しい現実

「日本産業の中期見通しー向こう5年(2026ー2030年)の需給動向と求められる事業戦略ー」(画像:みずほ銀行)
「日本産業の中期見通しー向こう5年(2026ー2030年)の需給動向と求められる事業戦略ー」(画像:みずほ銀行)

 先に示した三つのシナリオのうち、一定の厳格化が想定されるメインシナリオでは、米国への生産およびサプライチェーンの移管が強く求められる。

 米国への生産移管にともない、

・インフレによる生産コスト上昇
・米国内の技能労働者不足
・政策変更の頻発

などリスクが存在する。経営判断は慎重に行う必要があるが、工場新設に踏み切るケースは少なく、既存工場の稼働率向上が現実的な対応策となる可能性が高い。

 メキシコ生産品の大半がUSMCA非適用となるほど規則が厳格化した場合、リスクケースとなる。本調査のコスト試算では、現状のメキシコ生産コストを100%とした場合、メキシコで生産を維持すると121%まで増加するのに対し、米国移管後は116%となり、米国への生産移管が事実上強制される可能性がある。

 現在、メキシコに生産工場を持つ自動車メーカーはトヨタ、日産、ホンダ、マツダである。各社の生産能力を合算すると年150万台を超え、全ての生産をメキシコから米国へ移管するのは現実的に困難である。さらにサプライヤーでは、200社を超える企業がメキシコに生産拠点を構えており、サプライチェーン全体への影響も大きい。

全てのコメントを見る