物流会社は「対応力」を売りにしてはいけない! ヤマト・佐川がなぜ絶対ポジションを得たのか 今こそ振り返る時だ

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日本の物流会社は「対応力」を自社の強みとするのが多い。しかしそれだけでは他社との差別化が難しい。問題はどこにあるのか。

対応力を高めるべきなのか?

物流トラックの貨物室(画像:写真AC)
物流トラックの貨物室(画像:写真AC)

 A社の本当の強みは対応力ではなかった。他の物流会社も同様の対応をしていたからである。規定の時間後に出荷依頼を受けても対応することは、暗黙のルールだったのだ。

 欧米では、このようなことはあり得ない。規定の時間後に出荷依頼を受ければ、断るか、別料金を得るかのいずれかだ。もしそれが暗黙のルールだと言うのなら、出荷依頼の締め切り時間を変えるべきである。

・日本と欧米では商慣習が異なる
・欧米流は日本で通用しない

と思われる人も多いだろう。だが、日本にも暗黙のルールを前提としない物流サービスが存在する。それは宅配便だ。

 当たり前だが、どの宅配業者も運べる荷物の大きさを規定している。それ以上に大きな荷物を持ち込まれても断るだけだ。取りに来てくれる時間も、配達できる時間も決まっている。規定の時間後に出荷依頼を受けても対応しない。

 極論すれば、宅配便は暗黙のルールを徹底的に排除し、オペレーションを標準化・画一化したからこそ、膨大な荷物を効率的に運べるのである。

「頑張って対応する」は差別化にならない

物流のイメージ(画像:写真AC)
物流のイメージ(画像:写真AC)

 ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便の3社は、その仕組みを確立することによって寡占的な地位を得ることに成功した。他方、日本には6万を優に超える運送会社が存在する。その多くが対応力を強みと考えているのなら、これほど滑稽なことはない。対応力を軸に戦っているからこそ、

「埋没」

するのである。

 もちろん、欧米の物流会社や宅配業者のように、標準化・画一化を図ることが正しいとは限らない。「対応力なんて不要だ」などと言うつもりもない。ただ、

「顧客からの依頼に頑張って対応する」

だけでは差別化が難しいということだ。

 かつてのヤマト運輸は、誰しもがやりたがらなかった手間のかかる小口荷物を積極的に取り扱うことで飛躍的な成長を実現した。顧客からの期待に応えることに加えて、他社にはない「自社ならではの価値」を戦略的に創出することができれば、ヤマト運輸に比肩する進化を果たすことも夢ではないのである。

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