トヨタ1.5兆円投資は「関税回避」の代償なのか? 米国で繰り広げる“政治的ポーカー”を考える

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トヨタが米国に2030年までに1.5兆円を追加投資、HV市場で6割超シェアを握る背景には、関税対策、サプライチェーン強化、EV過剰供給への備えという複合戦略がある。米市場での長期競争力を巡る挑戦が始まった。

筆者の意見

関税イメージ(画像:Pexels)
関税イメージ(画像:Pexels)

 トヨタの米国巨額投資の主な狙いは、需要が底堅いHVのサプライチェーン強化にあるだろう。2024年の米国市場でのHV販売台数は約80万台で前年比50%以上の伸びを示した。EV税額控除終了後もHV優位の状況は続き、米国内での生産増強は短期的な安全策として機能する。

 EV市場の長期的な需給見通しには不透明感が強い。アリックスパートナーズによれば、北米のEV用電池生産能力は2028年に需要の2.4倍に達し、2030年まで供給過剰が続く見通しだ。こうしたなかでHV基盤強化は、合理的な選択肢として安全策の役割を果たす。

 公式には関税影響を理由としていないが、米国内での雇用創出や現地生産拡大は

「関税引き下げ交渉のカード」

になる可能性が高い。VWの先行事例を踏まえ、トヨタが追随しないとは考えにくい。投資実績は、産業全体での信頼性やブランド価値の向上にも寄与し、交渉力を高める要素となる。

 さらに、トヨタの対米投資は米国側の政治的期待に応じた判断ともいえる。過去数十年、米国政治の圧力には現地生産拡大で対応してきた実績がある。トランプ大統領の発言も、政治的期待の高さを示す象徴的事例であり、投資判断に影響していることは否めない。

 自動車産業の構造転換という視点では、HV投資は関税対策にとどまらず、技術開発拠点の確保やサプライチェーン強靱化、地域協業によるブランド力向上といった複合的価値を持つ。米国での生産能力と販売基盤を同時に強化することで、長期的競争力を維持する戦略と評価できる。

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