トヨタ1.5兆円投資は「関税回避」の代償なのか? 米国で繰り広げる“政治的ポーカー”を考える
トヨタが米国に2030年までに1.5兆円を追加投資、HV市場で6割超シェアを握る背景には、関税対策、サプライチェーン強化、EV過剰供給への備えという複合戦略がある。米市場での長期競争力を巡る挑戦が始まった。
トヨタの戦略的重要性

トランプ政権の関税政策では、日本から輸入する自動車と部品に15%の相互関税が課され、日本企業に圧力がかかっている。トヨタは2026年3月期の通期決算で、関税影響による減益要因として1兆4500億円を計上している。
米国市場は、トヨタにとってグローバル販売台数の約3割を占める最大市場だ。特にHV市場ではシェア6割超を確保し、収益源としての安定性が高い。中国勢がアジア市場で台頭する中、中国勢がほとんど存在しない米国市場は戦略的重要性を増している。市場規模だけでなく、技術開発やサプライチェーン構築、ブランド力強化にも影響する重要な拠点だ。
トヨタは巨額投資について公式に「関税回避のための投資ではない」と説明している。しかし、トランプ大統領が来日した際、米海軍横須賀基地で「トヨタ自動車は、米国全土に生産工場を建設する予定で、その規模は100億ドルを超えるそうだ」と発言したことから、
「政治的意義」
も含まれる可能性がある。
独フォルクスワーゲンは2025年7月から米政府と関税交渉を開始し、投資を通じて関税引き下げや輸出機会の拡大を狙っている。米国に1ドル投資するごとに関税負担を1ドル軽減する提案にも米側は前向きだとされ、トヨタも同様の交渉材料として投資を活用する可能性は高い。
さらに米国内での工場展開は地域経済への影響も大きい。雇用創出や地元サプライヤーとの連携は、政治的・社会的な信用力強化にもつながる。自動車産業全体の視点では、関税対策にとどまらず、米国市場での長期的競争優位を維持する戦略的布石であることが明確だ。