トヨタ1.5兆円投資は「関税回避」の代償なのか? 米国で繰り広げる“政治的ポーカー”を考える
トヨタが米国に2030年までに1.5兆円を追加投資、HV市場で6割超シェアを握る背景には、関税対策、サプライチェーン強化、EV過剰供給への備えという複合戦略がある。米市場での長期競争力を巡る挑戦が始まった。
米国電動車市場の構造変化

トヨタ自動車は2025年11月12日(米国時間)、ノースカロライナ州に新設した電池工場「トヨタ・バッテリー・マニュファクチャリング・ノースカロライナ(TBMNC)」の開所式を行い、2030年までの5年間で米国事業に最大100億ドル(約1兆5000億円)を追加投資すると発表した。トヨタが米国に進出して約70年で積み上げた総投資額は600億ドル(約9兆円)に達する。
投資の背景には、米国電動車市場の構造変化がある。米エネルギー省によれば、2025年1月から9月までの米国市場における電動車(ハイブリッド車〈HV)、プラグインハイブリッド車〈PHV〉、電気自動車〈EV〉)の販売台数は272万台で、前年同期比で2割以上増加した。
このうちHVは150万台を超え、市場全体の半数以上を占める。前年比33%増で電動車市場の成長をけん引している。EVに対する新車購入やリース、中古EVの税額控除は2025年9月末で終了しており、EV市場は今後の見通しが不透明となっている。
消費者の選好にも変化が表れている。充電インフラの地域差や、HVがガソリン車ユーザーにとって導入しやすいことがHV需要を支えている。州ごとの規制やインセンティブの違いも、メーカーの投資戦略に影響を与える要因となる。このため、トヨタにとってHVの供給網強化は、生産拡大の手段にとどまらず、米国内での市場支配力を維持する上で重要な戦略だ。