日産の技術は正しい! 復活のカギは「日本らしさ」か?──EVとProPILOTが描く、安全・快適・心地よい移動体験とは【リレー連載】頑張っちゃえ NISSAN(7)

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日産はEVやe-POWER、自動運転で技術の先端を走る。しかし北米・欧州の販売は縮小し、収益構造は揺らぐ。理念と現実の乖離を正面から見据え、軽EV「サクラ」やSUV「アリア」を軸に、量から質への転換とブランド再翻訳に挑む戦略が始まった。

成熟市場と新興市場の戦略

日産自動車のロゴマーク(画像:時事)
日産自動車のロゴマーク(画像:時事)

 地域ごとに文化や市場環境は異なる。しかし、根底の課題は共通する。それはブランド価値をどう翻訳し、再定義するかである。

 国内や北米市場は成熟しており、技術や価格だけでは差がつきにくい。購買を左右するのは性能ではなく、ブランドが象徴する思想や生活価値である。「技術の日産」はかつて有効だったが、今は再解釈が必要だ。合理性や快適性、人間中心設計といった価値を、体験やデザイン思想として再構築し、現代の文脈で伝えることが求められる。

 一方、中国や新興国では若年層を中心に市場成長が続く。初めて車を所有する層にとって、車はスマホの延長であり、操作性やアップデートの速さが重視される。テクノロジー企業的体制を持つ新興勢が優位に立つのは必然である。スマホ市場を席巻した中国勢のスピード競争が車にも及んでいる状況だ。

 しかし車はスマホと異なり、物理的な移動手段という本質を持つ。スピード競争の終焉後には、走る車としての完成度が再び差別化の源泉となる可能性もある。そのとき日産の快適性や合理性は再評価される余地がある。中国市場から完全撤退せず、存在感を示すことができれば、スピード競争の先で優位を発揮できるだろう。

 最終的に問われるのは、企業がどんな哲学で製品を設計しているかである。スピードや規模の競争が一巡した後に残るのは思想だ。それを市場ごとに翻訳し、生活者に伝えられるかが競争力を決める。

 日産の復活には、技術やデザインの理由を明確にし、それを文化や市場に応じて体験として翻訳することが不可欠である。EVの静けさやProPILOTの安心が描くカーライフを、誰もが具体的に思い描ける形で示す必要がある。この「ブランド翻訳」こそ、スピード競争を超えた時代における戦略の核心である。

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