日産の技術は正しい! 復活のカギは「日本らしさ」か?──EVとProPILOTが描く、安全・快適・心地よい移動体験とは【リレー連載】頑張っちゃえ NISSAN(7)

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日産はEVやe-POWER、自動運転で技術の先端を走る。しかし北米・欧州の販売は縮小し、収益構造は揺らぐ。理念と現実の乖離を正面から見据え、軽EV「サクラ」やSUV「アリア」を軸に、量から質への転換とブランド再翻訳に挑む戦略が始まった。

生活像の提示と余白の時間

日産イメージ(画像:Pexels)
日産イメージ(画像:Pexels)

 近年の日産は「日本らしさ」の再定義を試みている。軽EV「サクラ」やSUV「アリア」には、静けさや調和といった日本文化の要素が取り入れられている。水平基調の内装や柔らかな陰影は、寺社建築を思わせる意匠である。EVという新しい生活基盤に和の静謐を宿す試みだ。グローバル車種でも地域ごとに最適化を進めつつ、日本的でシンプルな機能美を訴求する姿勢が見える。ゴーン体制後の再出発として、日本的美意識を通じ世界と向き合う姿勢がブランド再構築の軸になっている。

 この方向性は日産の文化に合致する。剛性や重量バランスなど、見えない部分に誠実さを込める文化は伝統的職人気質に通じる。アリアの室内も「間」の美学を生かし、静粛性や運転支援と調和させ、穏やかな時間を演出している。

 ただし、この日本的機能美が十分に伝わっているとはいえない。「間」の美学は理屈ではなく体験で理解される。日本古来の建築における「間」とは、客をもてなしつつ個の集中を深める静かな余白である。EVの静けさやProPILOTの快適さと組み合わさり、車内を余白の時間に変えることが可能だ。しかし、その先にある「どんなカーライフを描くのか」はまだ曖昧である。

 快適性や経済性、運転しやすさは多くのメーカーが語る共通語にすぎない。日産が目指すべきは、車を通じ生活を整え、心の余裕を生む提案である。車を家や再生可能エネルギーとつなぎ、燃料費のいらない暮らしを描くのか。あるいは、洗練された空間を家族との対話や音楽を楽しむ場とするのか。技術が導く生活像を語らなければ、正しさは機能の羅列で終わる。

 技術やデザインは時間とともに陳腐化する。だからこそ、それらに意味を与え、「次世代」という一過性を超えた持続的差別化を築く必要がある。必要なのは「最新」を「永続」に変える説明だ。理念やデザイン意図を体験に翻訳する努力こそ、技術を文化的強みに変えるカギである。

 経営的にも、いま日産はモデルライフ依存構造の転換期にある。モデルチェンジごとに業績が揺れ、技術訴求も時間が経てば値下げ競争に呑まれる。この循環を断ち、時間に耐えるブランドを設計できるか──そこに復活のカギがある。

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