北陸道「全線開通30年」 15兆円効果の裏で進む「老朽化」「ストロー現象」――地域流出は止められるか?

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北陸道は全線開通から30年で約15兆円の経済効果を生み、沿道5県の産業や観光を支えてきた。能登地震では救援の生命線となり、災害対応力の重要性を示した。一方で老朽化や地域格差、「ストロー現象」といった課題も顕在化。更新投資と地域連携により、次の30年に向けた“持続する高速インフラ”への転換が問われている。

緊急時の命綱としての北陸道

在りし日の輪島の朝市(画像:写真AC)
在りし日の輪島の朝市(画像:写真AC)

 2024年1月1日、北陸地方を能登地震が襲った際、北陸道は地域の生命線として機能した。石川県北部を中心に甚大な被害が発生したが、高速道路の存在により救援活動や支援物資の輸送が迅速に行われ、被災地の復旧に大きく貢献した。

 地震発生からわずか4時間後には緊急車両が通行を開始し、30分後には福井県坂井市の丸岡IC~石川県加賀市の加賀ICの通行止めが解除、翌日21時には北陸道全線で通行止めが解消された。半年間で、災害派遣車両は約2.6万台、ボランティア車両は約1.4万台が北陸道を利用し、被災地の救援・復興活動に従事した。

 北陸道は、比較的振動の少ない構造で設計されており、これが救急搬送の際に患者への負担軽減につながった。被災地では水道や電力などのライフラインも途絶していたが、北陸道が物流と人の流れを維持したことで、生活再建や復旧作業が迅速に進められた。

 また、地域経済や産業への影響も大きかった。輪島市の朝市や輪島塗など、全国的に知られる地元産業も、高速道路の確保により迅速な物資輸送や観光支援が可能となった。これにより、災害後も地域の生活基盤や経済活動が比較的短期間で回復できた点は、北陸道の社会的価値を示す重要な事例である。

 北陸道の災害対応力は、道路そのものの機能に加え、地域自治体や企業との連携があってこそ成立する。災害時の情報共有や物資輸送ルートの確保、避難計画との接続など、道路を軸とした地域防災ネットワークの重要性も再認識された。

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