「私は長崎市に行かない」 9月開業・西九州新幹線に地元から「NO」の声、経済効果は本当にあるのか?
長崎市も「アジアの玄関口」に

コロナ禍で中断しているが、九州で「アジアの玄関口」としての地位を築いているのが福岡市である。
福岡空港が市街地に近接している利点を生かし、福岡市では観光・経済両面の拠点としての都市開発が進展していた。九州を訪れる外国人観光客は、ほぼ例外なく福岡市に滞在し、九州各地に向かうルートを取る。新幹線開業に伴う長崎の再開発でもくろまれているのは、長崎市を福岡市に次ぐ「アジアの玄関口」にしようというものだ。
長崎の国際性といえば、江戸時代のオランダ貿易がイメージされがちだが、それ以上に長崎を発展させたのは近代以降の日華連絡船だった。
長崎~上海の航路が1923(大正12)年から1943(昭和18)年まで開かれていたため、長崎は外国とつながる最も近い国際都市だった。当時、上海への渡航はパスポートが不要で、上海に暮らす長崎県出身者も多かった。雲仙は1934年に日本初の国立公園に指定されているが、選ばれた理由は、
「上海から近い避暑地」
だったから、ということはあまり知られていない。
嬉野市の埋まらない区画

そんな勢いに乗る長崎市に追いつけと、新幹線の停車各駅で開発が進んでいる。
新大村駅が建設される長崎県大村市では、駅東側にある2.5haの市有地の開発計画が進行中だ。諫早駅では再開発ビルが建築され、駅向かいにあった昭和感あふれる県営バスターミナルもこちらに移動する(『長崎新聞』2022年1月3日付朝刊)。
新幹線駅ができると企業誘致への期待が高まる――というのは、新線開通のたびに起こってきた現象といえるが、果たして今回はそんなにうまくいくだろうか。北海道新幹線で湧いた道西部の北斗市がそうだったように、誘致のための土地は準備したものの、結果的に空き地が目立ってしまうのではないか。
嬉野温泉駅が開業する佐賀県嬉野市では、2020年に約4億5900万円を投じて、駅南側に2階建ての企業誘致ビルを建設した。しかし準備した7区画に対して、オープン間近の2019年12月時点で埋まったのは1区画のみ(『読売新聞』2019年12月3日付西部朝刊)。2021年10月にようやく3社が入居して4区画が埋まったが、お世辞にも満杯とはいえない(『佐賀新聞』2021年10月5日付朝刊)。新幹線開業に併せて、外資系ホテルの進出や道の駅の整備などが行われる嬉野温泉だが、観光面以外での見通しは明るくない。
同じく佐賀県の武雄温泉駅では、博多駅発佐世保駅行きの特急が1時間に上下1本ずつ停車している。新幹線の開業後は、新幹線がこれに上下2本ずつ増加。佐賀県は
「長崎と福岡の両市が通勤圏となり、武雄の魅力が高まる」
としている(『佐賀新聞』2020年10月11日付朝刊)。