地方交通の雄「イーグルバス」 埼玉県で不採算路線に挑戦、弱者ケアも欠かさない公共交通の矜持とは

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埼玉県川越市に本社を置くイーグルバス。不採算路線に挑む姿勢の裏にあるものとは。

公共交通を担う者の「矜恃」とは何か

バス運転手のイメージ(画像:写真AC)
バス運転手のイメージ(画像:写真AC)

 結果を出したことで、この路線が再生する切り札となったデータ収集のシステムは全国から注目された。冒頭に書いた十勝バスも2013年、同じシステムを導入している。

 技術を駆使した先進性は称賛に値するが、筆者がそれよりも知ってほしいのは、不採算な路線にあえて挑戦した同社の姿勢だ。

 参入間もない時期に『朝日新聞』2006年7月19日付朝刊で、谷島賢社長は

「採算を確保できるか、危機感はある。車の運転のできない高齢者の多い地域を交通空白地帯にすることはできなかった」

と語っている。

 ここに、交通事業者なら誰もが見習うべき

「公共交通を担う者の矜恃(きょうじ)」

を感じずにはいられない。

 イーグルバスでは、路線バス参入以前の1997(平成9)年には車いすのままの乗れるリフト付きタクシーを導入。その後も、難聴者がバス内の音声を聞き分けることができるシステムを導入した観光バスを開発するなど、一貫して社会的弱者にも利用しやすい環境整備に力を注いできた歴史がある。

「誰にでも利用しやすい」

という時に、事業者はどこに目線を置いたらいいのか――。単なるイノベーションだけではない、同社を貫く精神性が成功のカギだったと筆者は感じている。