絶対王者のホンダに暗雲? ベトナムの「バイク規制」「市場飽和」がもたらす行く末とは

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飽和状態に近づくベトナムのバイク市場。現在、自動車メーカーや安価な電動バイク製造メーカーが急速にシェアを拡大している。

なぜホンダが人気なのか

現地法人ホンダベトナムカンパニー・リミテッドのベトナムの二輪車生産累計3000万台目「Winner X」(画像:本田技研工業)
現地法人ホンダベトナムカンパニー・リミテッドのベトナムの二輪車生産累計3000万台目「Winner X」(画像:本田技研工業)

 ホンダはベトナム現地法人であるホンダベトナムカンパニー・リミテッド(以下、ホンダベトナム)を1996年に設立し、翌年にはベトナムで二輪車の生産を開始した。2020年には、ベトナムでの累計生産台数3000万台を突破し、現在まで四半世紀に渡りベトナムで二輪車を製造し続けている。

 この25年の間にホンダベトナムは生産の現地化を進めてきた。

 約508億円を投じて3か所の二輪車製造工場を設立したほか、パーツセンターなどの関連施設を稼働させている。またベトナム全国にホンダ正規販売店を展開し、その数は全国に786か所(2022年4月時点)もある。地方であっても国道沿いには必ずと言っていいほどホンダの販売店を見かけるほどだ。

 ベトナムは道路環境が悪く、バイクを選ぶ際には故障しにくく、かつ、故障しても容易に部品が入手できることは絶対条件だ。ホンダベトナムは、バイクを販売するだけではなく、メンテナンスや修理なども行う環境をこの25年で整えてきた。

 正規販売店を全国に増やすことでユーザーの利便性を高め、今ではベトナム人の生活にホンダのバイクはなくてはならない存在となったている。高い認知度と80%近いシェアを獲得できたのも、長期的な戦略が功を奏した結果だと言える。

バイク業界に影を落とす2030年問題

現地法人ホンダベトナムカンパニー・リミテッドのウェブサイト(画像:本田技研工業)
現地法人ホンダベトナムカンパニー・リミテッドのウェブサイト(画像:本田技研工業)

 ここまで見てきたような背景がある中で、ベトナムのバイク業界に影を落とすのが2030年問題だ。2030年問題とは、ベトナム政府が同年から実施する大都市でのバイク規制に伴って生じるであろう問題である。

 近年、ベトナムでは急速な経済発展に伴う

・交通渋滞
・大気汚染

が深刻な社会問題になっている。

 特に首都ハノイ市の大気汚染は深刻で、「世界大気汚染都市ワースト10」に同市は度々ランクインしている。ベトナム政府は、深刻な交通渋滞と大気汚染を理由に、ハノイ市、ホーチミン市、ハイフォン市、ダナン市、カントー市の五つの中央直轄市に、2030年以降に二輪車の規制を実施する行動計画を発表した。

 2030年の大都市でのバイク規制は、ホンダをはじめベトナムのバイク業界に影を落とす。

 政府の計画では、5都市の中心部へはバイクの乗り入れを禁止し、バイク使用の際には課金することが計画に盛り込まれている。また、市内交通機関の利用率を2022年までに30~35%(2022年現在達成されていない)、2030年までには50~55%に引き上げることも目標としている。

 しかし、公共交通の整備が整っていないことが交通渋滞の要因であるにもかかわらず、抜本的な改善がなされないままバイク規制がなされるという厳しい状況に、バイク関連業界は懸念を抱いている。

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