なぜホンダは「就職ランキング」でトヨタに完勝したのか?――安定より学生が選んだ「意外な魅力」とは
技術文化が若者を魅了

筆者(北條慶太、交通経済ライター)は、自動車業界を就職先のひとつと考える若者に取材する機会が多い。取材を通じて、トヨタは「巨大で安定した完成車メーカー」として認識され、ホンダは
・異分野への挑戦や研究
・個人技術者の成長
を重視する企業として評価されていることがわかる。最近の若者はキャリア形成において、自分のやりたいことや興味のあるテーマを重視する傾向が強い。出世や高収入よりも、
・好きなことを達成できるか
・好きなことをやらせてもらえるか
を重視する傾向が顕著である。大企業の安定感よりも、自己実現や達成感の満足度を優先する若者が増えている。この価値観の変化が、就職ブランドランキングの結果に直結したといえる。
ホンダの勝因のひとつは、多角的事業展開への評価である。ホンダと聞けば、まずバイクの世界シェアナンバーワン1が思い浮かぶだろう。2024年の出荷台数は約1800万台に上り、二輪・四輪以外の基盤も強い。ASIMOを起点とするロボティクス、航空機(ホンダジェット)、エネルギー機器など、多角化の実績もある。二輪や四輪、芝刈り機や発電機などのパワープロダクツ、航空やマリン、水素、ロボット、宇宙といった新領域まで幅広く事業を展開している。
こうした多様な領域で培われた技術を組み合わせ、シナジーを生み出そうとする姿勢も若者には魅力的に映る。近年では、
・内燃機関
・水素事業
・ジェット事業
での技術力も高く評価されている。さらに、社名に「技研」を頑なに残すことで、若者から自動車会社ではなく
「技術会社・研究所」
として認識され、挑戦的な職場としての評価につながっている。
もうひとつの勝因は、研究所起点の風土と技術文化である。ホンダには独立した研究機関としてホンダ技術研究所が存在する。2024年度の研究開発費は約9000億円(売上比5.5%)で、トヨタの約1.3兆円(売上比3.9%)と比べても、研究開発への意気込みが際立つ。大学院出身者や専門性の高い人材が裁量を持てる組織設計がなされている。
筆者の取材先の大学教員によると、少子化で大学の研究者ポストが減るなか、自動車関係の大学院修了者、特に
「博士課程の人材」
はホンダ技術研究所をキャリア形成の目標に据えることも少なくないという。新しいことに挑戦するホンダの姿勢と、自分の研究者・技術者としての成長機会がマッチすれば、最適な選択肢になる。研究重視のブランディングが若者の支持を集めているのだ。