地方交通の雄「十勝バス」 労使最悪&破綻寸前からの大復活はいかに成し遂げられたのか
地方のバス会社の好例として注目される帯広市の十勝バス。労使関係が最悪だった同社が復活を遂げた背景には一体何があったのだろうか。
総合サービス企業への転換

このほかにも、十勝バスのアイデアには目を見張るものがある。
例えば同社が販売している全線乗り放題切符(1日用と2日用)は2021年5月からスマートフォンでの購入が可能になった。それまで帯広駅バスターミナルの窓口でしか買えなかったが、どこでも買えるようになったことで地元客の利用が期待されている。
また、帯広~札幌間の都市間バス・ポテトライナーで荷物を運ぶサービスや、予約制ジャンボタクシーの運行、宅配事業にも乗り出している。交通系以外でも介護や学童保育事業に参入している。いわば、バス事業をベースにした
「住民向けの総合サービス企業」
が現在の同社の姿なのだ。
復活のきっかけは「バスの乗り方」案内だったが、それにとどまらず、地域の活性化につながる事業を推進していったことが同社成功の理由だ。便利屋や焼き肉店も手掛けており、多角化を考えた時に選んだ事業について
「バスの利用を呼びかける」
から一歩進んだ工夫を感じとることができる。
経営難が続いている地方のバスを訪れると、
「行政の補助金がいつまで続くか
におびえつつ、漫然と空気を運んでいるだけの路線を見かけることも多い。
どん底からでも、知恵次第で復活できる。そのことを十勝バスの成功は物語っているのだ。